こちらは「-Stahl-」いづみさん宅のアルが執事、エドがお嬢様という設定のお話です
  それでも大丈夫な方のみお進み下さい























確かにその少女は特別だった。


感情を持たず、任務に忠実に生きてきたあの頃のボクに、人を慈しむ心を教えてくれた。
誰かの役に立ちたいと、大切にしたいと思う心があった事を気付かせてくれた。
愛おしいと感じたのはその少女だったから。その存在に出会えたから。
そして少女が血にまみれたこの手を望み、暗闇に沈むボクの心を引き上げてくれたからだ。

あの出会いがなければ、ボクはきっと今も優秀な軍人として色んなものを壊し続けていた。
人を殺し、その周囲の人々を傷つけて。その事に何の感慨を持つこともなく。
自分のしていることが、どんなに恐ろしい事なのかに気付く事もなかった。


きっと貴女がいなければ。
あのまま静かに、全てが壊れていたのだろう。









A darling person















「見合い…ですか。」
目の前で嬉しそうにしながら話す老人の言葉に、ホーエンハイムは呆然とした。

「何を呆けとる。エディもそろそろ年頃なんだし、こんな話のひとつやふたつ、珍しくもないだろう。」
「はあ、まあ確かにそうですが…。」
「急な話ではあると思うがな。何しろミシャールのやつ、エディに一目惚れしおって仕事にならん。」

ホーエンハイムの元に来た愛娘エディの見合い話。それは以前から世話になっていた恩師からのものだった。
彼によるとパーティでエディを見初めた青年が、それ以来ぼんやりとして魂が抜けた状態なんだそうだ。

「あの時お前も会っただろう。ミシャールは若いが見込みのある青年だ。悪い話じゃないと思うんだが。」
恩師であるフィリップ教授の言葉に、ホーエンハイムは小さく溜息をついた。
その青年の事は覚えている。まだ20歳前半なのに、フィリップ教授の助手として頭角を現していると聞いている。
育ちの良さそうな笑顔の、真面目そうな青年だった。それにフィリップ教授にはエディも可愛がってもらっている。
祖父母のいないエディは、時々しか会えないフィリップを本当の祖父のように慕っていた。
そのフィリップからの話であれば、むやみに断る事はしたくない。だが…。

今まで確かに娘に見合いの話はあった。世界的に著名なホーエンハイムの一人娘。それだけでも縁戚になりたいと考える輩は多い。
しかしこれまで持ち込まれた話の尽くは、娘の耳に入れるまでもなく断っていたホーエンハイムだった。だが今回は相手が相手だ。
本当なら誰からの話であろうと、愛娘に見合いの話しなんてまだ早いと思ってしまう。それが例え将来有望な青年だろうとも。
それに…、当のエディにはまったくその気はないだろう。
何しろ彼女には、幼い頃から意中の相手がいるのだから。…それを認めてるわけではないが。

「一応エディに話はしてみましょう。それ以降の事は彼女の意思次第です。」
気乗りはしないが無碍に断るわけにもいかない。仕方なしに彼は娘を呼ぶようにメイドに声をかけた。













「親父が呼んでる?」
客間に来るようにとの伝言にエディは頭を傾げた。今エディは勉強の時間だ。そんな時に呼ぶなんて珍しい。

「確か、旦那様の所にはお客様がいらしていたようでしたが。」
もう帰られたのでしょうか。と不思議そうに話すアルフォンスに頷いてみせる。
広い家では二階の自室にいると誰が来たかは分かりにくい。でも人が来た事、帰ったかなという事くらいは分かる。
ほんの数十分前に来たらしい来客は帰った様子がなかった。という事は客間にまだいるのではないか。

「何だろ。まあいいや、アルも一緒に…。」
「いえ、お客様がまだいらっしゃるかもしれませんから、私は控えさせていただきます。」
アルフォンスの言葉にエディがむくれた。それに苦笑しながらアルフォンスが先を促す。

「今日の授業はここまでにしましょう。お戻りになったら、お茶でも煎れましょうか。」
用意しておきますね。そのアルフォンスの言葉にエディが顔を綻ばせる。
その素直な反応に微笑みながら、アルフォンスはエディを客間へと見送った。










「見合いー!?」
久しぶりに会ったフィリップとの再会を喜んだのも束の間、切り出された話題にエディは仰天した。
ミシャール?誰それ。言われてみるとそんなのがパーティの時フィリップの横にいたような気もする。
が、はっきりいってどうでも良いので覚えてなかった。
記憶力は抜群のエディだったが、興味のない事に対するそれは鶏以下だ。三歩歩いたら忘れてしまう。

「堅苦しく考えんでもいいぞ。一度話をしてみないか。」
これ、一応釣書だからと渡された物を、エディは開きもしないで突っ返す。

「堅かろうが柔らかかろうが関係ないね。じいちゃんには悪いけど見合いなんて絶対やだ。」
「そう言わずに、ちょっとくらい写真を見てみんか?結構ハンサムだと思うぞ。」
「ハンサムだとか関係ないよ。見合い自体をしたくないんだ。」
はっきりきっぱり即答の少女に、フィリップ教授は残念そうな顔を隠さない。
可愛がってもらっているフィリップのその表情に良心の疼きは感じるが、それとこれとは別問題だ。

「フィリップ教授、エディもこう言っている事ですし。今回の話はなかった事にしていただけますか。」
「…そういう話だったから仕方ない。ここは諦めるとするか。」
意外にすんなりと引いたフィリップに、エディはホッと息をついた。








客の帰りを知らせるベルが調理室に響く。
休憩の為のおやつを準備するべくコックの元へ来ていたアルフォンスは、その音で顔を上げ時計を見た。
お客様がお帰りになるなら、呼ばれていたエディの話もすんだのだろうか。
用事がすまれたなら、久々にお茶をご一緒されたいだろうし。旦那様の分もご用意した方が良いかな。
そう思って様子を見に玄関へと向かったアルフォンス。見送りしているホーエンハイムとエディの姿が見える。
そして今にも玄関から出ようとしていた人物がアルフォンスに目に気付いた。

「おお、アルフォンスじゃないか!相変わらず男前だの!」
「お客様はフィリップ教授でしたか。お元気そうで何よりです。」
バンバンと叩かれる背中に苦笑いする。久しぶりに会うその老人は、まったく変わらず元気なようだ。

「元気も元気だとも。元気ついでに仲人でもしようと思ったんだがの〜。」
「仲人…ですか。」
「じ、じいちゃん!その話はもう終わっただろ!!」
焦りながらアルフォンスとフィリップの間に体を割り込ませるエディ。

「終わったが、だが残念だよ。ミシャールは超お薦め物件なんだが…。」
「無理に若ぶって超とか言ってんなって。大体お薦めって、不動産かなんかじゃないんだから。」
「じゃあ婿候補一押しとでも言っておくか。」
「あー、もうそんなのどうでも良いから!この話はお終い!以上!!」
言いながらフィリップの背中をぐいぐい玄関から押し出すエディ。

「なんじゃエディ。随分と今日は冷たいのお、じいちゃん寂しいぞ。」
「こういう話持ってこなけりゃ、いつでも大歓迎なんだけど。」
待機していた車にフィリップを押し込める事に成功したエディ。にこやかに手を振ってみせる。

「じいちゃんもさ。元気なんだったら、そのミシェールとやらに別の女の子紹介してやってよ。」
「…それはちと酷かもしれんがな。」
見初めた相手に別の女を紹介してやれと言われてしまうとは、かの青年にとってかなり酷い話だ。
大体ミシェールじゃなくてミシャールなんだが。…まあもうどうでもいいか。

「次はもっとゆっくり来るとしよう。エディもうちに遊びに来なさい。ばあさんが会いたがっておったぞ。」
「オレも会いたい。今度遊びに行くって伝えといて。」
走り去っていく車を手を振りながらみんなで見送る。エディはおずおずと隣に立つアルフォンスの顔を見た。
その視線に気付いてアルフォンスがエディを振り返る。

「お嬢様、どうなさいました?」
いつもと同じアルフォンス。その優しげで穏やかな表情は少しも変わらない。
…オレの見合い話があったって聞いた後でも。

「何でもないよ。」
そう言った言葉と裏腹に、いつもよりも元気のない笑顔のエディ。それは心なしか寂しそうにも見えて。
アルフォンスの胸をちくりと何かが刺した、ような気がした。















「ばあちゃん、久しぶり!」
「まあまあエディ、本当に久しぶりだこと。」
家に入って来るなり嬉しそうに抱き付いてきた少女に、フィリップ教授の妻ミリアムは顔を綻ばせた。

「今日はアルフォンスは一緒じゃなかったのか?」
フィリップの疑問は当然だ。今まで二人が一緒にいない所など見た事がない。

「アルは今日休暇中。休めって言ってもなかなか休みを取らないから、無理矢理休ませちまった。」
「そりゃ呆れるくらいにアルフォンスらしいが。そんな時に出掛けたんじゃ、かえって心配するんじゃないか?」
「大丈夫、ここに行くって言ったら安心してた。この家はセキュリティもしっかりしてるしさ。」
どうせ車で送り迎えだしそんなに遠い距離ではない。外で待つ車には別のボディガードも控えている。

「それにしても女の子は成長が早いわ。すっかり綺麗になって。もう立派な大人の女性ね。」
居間でお茶の仕度を整えながらミリアムは嬉しそうに話す。その言葉にエディは苦笑した。
夫妻には子供がいない。だから二人は時々しか会えないエディを本当の孫のように思っていた。
エディも大好きな母と雰囲気のよく似たミリアムを、本当の祖母のように思っている。
そんな大好きな二人だからこそ、つい本心が出てしまうのかも知れない。

「大人の女性なんかじゃないよ。…アルだっていつまで経っても子供扱いだ。」
ふう、と小さく溜息をつくエディ。その表情は子供だなんて到底見えない憂いを帯びている。
そこから感じとれるのは、相手に異性と見られない事へのもどかしさ。それが意味するのは…。
確かにもう彼女は立派なレディだ。すでに心に秘めた人がいるのだから。

「やっぱりそうだったのね。エディ、ごめんなさい。」
突然謝られてエディが目をパチクリさせる。ミリアム夫人は紅茶のカップを差し出しながら彼女に笑いかけた。

「貴女に見合い話なんて持っていくべきじゃないって、私何度も止めたのよ。なのにこの人ったら聞かなくって。」
「あの時は良い話だと思ったんじゃよ。エディには幸せになってもらいたいし。」
「エディの幸せを願うのなら、尚更あんな話は駄目なのよ。急かしたって良い事はないわ。」
「う〜む。もしやと思った事はあったが、やっぱりそうだったとは。それなら確かにエディに悪いことをしたわい。」
すまなかったとフィリップに謝られて、エディは慌てて手を振った。

「何で謝るんだよ!そりゃビックリしたけど、オレの事考えてくれてたのは分かるし、謝るような事じゃないじゃん!」
「しかしなぁ。好きな相手がいるのに見合い話を持ちかけられては、さぞかし嫌な思いをしただろう?」
一瞬フィリップの言った意味が飲み込めなくて時間が止まったエディだったが。
次の瞬間、ぼっと顔から火を噴いたかのように真っ赤になった。

「な、ななな何言ってんだよ!好きな相手って…!」
「違うの?」
不思議そうにミリアムが首を傾げる。また固まってしまった少女にミリアムは柔らかく微笑んだ。

「好きなんでしょう、アルフォンスの事。」
その穏やかな笑顔を見てしまうと、誤魔化すような事を言う気にもなれなくなってしまう。
それに…、誰かに言ってしまいたかったのというのが本音だ。
両親には言えない。家で働いてくれてる、家族同然の人達にも。
自分が大っぴらに気持ちを言えば、優しい彼らはその願いを叶えさせようとしてしまう。
そしてもっと優しいアルフォンスは、オレの想いに応えようとするだろう。それはアルフォンスを困らせる。
でも言いたかった。本当はいつも思ってた。
あの小さかった子供の頃のように、何の躊躇いもなく気持ちを口に出来たら良かったのに。

「…うん、好き。」
アルフォンスが好き。幼いあの時彼に恋した想いのまま。自分でも不思議な程、何も変わらない。

「アルじゃないと、オレ、嫌なんだ。」
微笑んだつもりだった。苦笑いになるだろうけど、それでもちゃんと笑えてると思ってた。
それなのに、何故か頬に一滴。熱いものが伝わっていく。

「なあオレさ、どうしたら良いのかな…?」
普段は強い精神力を持つその少女の、小さな体を。嗚咽も零さず涙を流すその不器用さも全て。
夫妻は静かに包み込むように抱き締めた。














広大な屋敷の中は手入れが行き届いている。その中庭に無理矢理休暇を取らされたアルフォンスの姿があった。
アルフォンスの部屋は屋敷の敷地内にある別棟の中にある。だが部屋にいる気になれなかった。
本当は次休んだ時にはやろうと思っていた事は色々あったはずだったのだけど。
友人にはたまには飯に付き合えと言われていたし、長く顔を見せてない馴染みの店にも行きたかった。
だけど出掛ける気にもならないのだ。
この得体のしれないもやもや感は暫く前から続いていたものだ。それを今日ははっきりと感じている。

「久しぶりの休暇だってのに、満喫出来ていないようね?」
静かに近寄ってくる女性の気配には気付いていたアルフォンス。ゆっくりと後ろを振り返ると予想通りの姿があった。

「シンディ、帰ってきてたんですか。」
「ええ、私は貴方と違って休暇を満喫してきたわ。」
土産よ、と放り投げられた紙袋を受け取ってアルフォンスが礼を言う。
シンディはホーエンハイムの警備を長年勤めるベテランのボディガードだ。以前は軍にいた事もある。
アルフォンスとはその頃からの顔見知りだ。最も軍にいた頃は、所属も違ったのでお互い会話らしい会話を交わした事などなかったが。

「その様子じゃ、良い結婚式だったみたいですね。」
彼女、シンディもその職業柄休みなど滅多に取らない。だが今回だけは特別だった。妹さんの結婚式だったのだ。

「まあね、旦那も優しそうな良い感じの人だったわ。両親も喜んでたし、これで一安心ってところね。」
「周囲、うるさかったんじゃありませんか?」
妹の結婚式に出席する独身の姉。それも妙齢の女性となれば、まわりが言う事など容易く想像出来る。
休暇前にその事で憂鬱そうにしていた彼女を思いだし、アルフォンスは尋ねてみた。

「最近じゃだいぶ諦めたみたいよ。それにうちは両親が理解してくれているし。」
「それは良かった。」
娘のやりたい事を理解し、何も言わないでくれている彼女の両親。
本当は言いたい事などたくさんあるはずなんだ。この職業は常に危険が付き物なのだから。
それでも理解を示してくれるなら、きっと彼女を愛し信じて見守っているのだろう。

「それよりもよ、私がいない間にお嬢様に見合い話があったって?」
「…随分早耳ですね。貴女は帰ってきたばかりだと思ってたんですけど。」
「帰ってきた途端にみんなに腕引っ掴まれたわよ。エディ様はうちのアイドルだもの。心配するのは当然でしょ。」
生半可な相手じゃ許さないから、と真剣な目で言うシンディに、アルフォンスは複雑な目を向けた。

「見合い話という程の話にもならなかったですよ。お相手はフィリップ教授の秘蔵っ子でミシャール様という方だったんですが。
 一度会うだけ会ってみないかと言われて、エディお嬢様が断ってそれでお終いです。」
「それは聞いたわ。…でも貴方、何だかすっきりしない顔してるわよ?」
長い付き合いゆえだろうか、ズバリを言い当てられてアルフォンスが思わずシンディの顔を見る。

「すっきりしない…。確かにそうなのかな。…自分でもよく分からないんですよ。」
ずっと続くもやもや感。気持ちが晴れないような胸が重く沈んでいくような感覚。
それは今まで味わった事のない気持ちだった。
口元に手を当て考え込むアルフォンスを見て、シンディは苦笑した。

「貴方ねぇ。鈍そうだとは思ってたけど、本当にここまで鈍いとは思わなかったわ。」
「鈍いって…。」
「いつも気が付き過ぎるくらいに人の心には敏感なのに、自分の事となるとからっきしなのねって言ってるの。」
そんな風に言われたのは初めてだった。自分でもそう思った事なんて今までなかったけれど。
だが確かに今、自分で自分の気持ちが判らない。掴みきれない何かが胸に渦巻いている。

「アルは良くも悪くも軍人として優秀すぎたのよ。自分の感情をコントロールする事に慣れすぎてた。
 でもね、人に対する好意や悪意から来る感情を、コントロールするなんて容易い事ではないわよ。
 気持ちを知らずに押し殺すのも大概にしとかないと。大切な人を傷つけることになるわ。」
「シンディ、それはどういう事…?」
「さあね。これ以上は自分で考えなさい。」
さてと、と立ち上がってシンディが大きく伸びをする。

「良い傾向だわ。何に対してすっきりしないのか、どうしてそう思うのか。ちゃんと自分の気持ちに向き合ってみなさいな。」
言うだけ言うと、彼女はさっさと身を翻してしまった。だが数メートル行った所でパッと振り返る。

「早く自覚してあげなさいね〜。」
大きな声でそう叫ぶと、にんまり笑って走り去ってゆく。
一人残されたアルフォンスは、彼女に言われた言葉を思い返していた。



『自分の感情をコントロールする事に慣れすぎてた。』
確かにそうかもしれない。子供の頃から感情を表に出さないようにと受けた訓練。身についたものはそう簡単には消えたりしない。
何に対して、と言うならば。それは今回の見合い騒動に対してなのだろう。
得体の知れないもやもや感は、あの日から始まったのだから。
なら、どうしてそう思う?何故エディお嬢様のお見合い話にこんな気持ちになるんだろう。
可能性としては、ずっと見守っていた少女に見合い話が来たことが面白くないのだろうか。

この手でお守りできなくなる事が嫌だと思っているのか。
この手から飛び立ってしまう日を恐れているのか。

ああ、でもそうなのか。嫌だと思ったんだな、ボクは。
いつか遠くない日。お嬢様の隣に誰かが並ぶ時がくる。それは分かっていたはずなのに。
コントロールされてたはずの感情がその事で乱れるくらいに、嫌だと感じているんだ。
でも嫌だと感じたこと、それを突き詰めて考えることは何故か躊躇われた。
そこに行き着いてしまうといけないような気がする。
だけど『大切な人を傷つけることになるわ』と言われたら考えないわけにはいかない。
アルフォンスにとって大切な人とは、たった一人しかいない。

「自覚しろって、これ以上に何を…?」
かの少女はボクにとって特別だった。だからこそ傍で守りたいと思ったのだから。
人を傷つける術を叩き込まれたこの体で、血にまみれたこの手で。
誰かを守りたいと思ったのはこれまででただ一人だけ。
傍にいると、これまで自分が犯してきた事の恐ろしさを自覚して辛くなる事もあったけど。
いつだって自分を慕って笑ってくれるその少女の存在があったから、自分を卑下することなく生きて来れた。
あの無垢な笑顔にどれだけ救われたかわからない。

だからこそ、彼女が幸せになるのを誰よりも望んでいた。ーそのはずだったけど。

今まで感じた事のない心の乱れ方に、アルフォンスは動揺を隠せないまま。
なかなか出ない答えを、戸惑い躊躇いながらも自問自答を繰り返していた。
























こちらの作品は「-Stahl-」の管理人いづみさんのオリジナル設定
執事アルとお嬢様に勝手に萌えたあげくに書かせて頂いたお話です。
設定の読み違いをしていたりして、本来のお話をはズレが生じています。番外として捧げました。
素敵なイラストを挿絵として描いて戴いているので、どうぞお足を運んで下さいませ!
等価交換として、私も素敵なイラストを戴いてしまい、ウハウハです♪いづみちゃん、ありがとう!

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